獣人の世界

2/18
128人が本棚に入れています
本棚に追加
/150ページ
  ……眩しい。 少年はゆっくりと瞼を開いた。 太陽の光が顔に当たっていたのだから、目が覚めてもおかしくはない。 「…………?」 少年ーー吉人(ヨシト)は辺りを確認して、首を傾げた。 なんでこんなところにいるんだ、俺は? 吉人は身を縮めて、すっぽりと木の洞の中に収まっていたのだ。 わけがわからない。確か自分は家族と、家の近くの山で、父親の提案した花見兼ハイキングを満喫……でもないけど、していたはずだ。 で、妹と弟が疲れたと訴えだしたから、休憩して……? そうだ、山桜を採りに一度別れたんだ。 山桜は石灰を含む土でしか育たない花だ。 あの山でも歩道沿いじゃ見つからない。 自分は確か、その花をクラスメイトに採ってきてほしいと頼まれたんだ。 だから家族が休憩しているうちに、山桜を探して道を外れた。 それで……なんで木の洞の中? 吉人はもう一度、中を観察してみる。 自然にできたものにしてはいびつな形で、人が一人入れるように大きいのもなんだかおかしい。 不自然なのだ。 でも、そうやって木を見ているうちに、段々と思い出してきた。  
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!