128人が本棚に入れています
本棚に追加
/150ページ
……眩しい。
少年はゆっくりと瞼を開いた。
太陽の光が顔に当たっていたのだから、目が覚めてもおかしくはない。
「…………?」
少年ーー吉人(ヨシト)は辺りを確認して、首を傾げた。
なんでこんなところにいるんだ、俺は?
吉人は身を縮めて、すっぽりと木の洞の中に収まっていたのだ。
わけがわからない。確か自分は家族と、家の近くの山で、父親の提案した花見兼ハイキングを満喫……でもないけど、していたはずだ。
で、妹と弟が疲れたと訴えだしたから、休憩して……?
そうだ、山桜を採りに一度別れたんだ。
山桜は石灰を含む土でしか育たない花だ。
あの山でも歩道沿いじゃ見つからない。
自分は確か、その花をクラスメイトに採ってきてほしいと頼まれたんだ。
だから家族が休憩しているうちに、山桜を探して道を外れた。
それで……なんで木の洞の中?
吉人はもう一度、中を観察してみる。
自然にできたものにしてはいびつな形で、人が一人入れるように大きいのもなんだかおかしい。
不自然なのだ。
でも、そうやって木を見ているうちに、段々と思い出してきた。
最初のコメントを投稿しよう!