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歩いていくうちに、さっきまでいた山とは違う場所にいる、という実感が湧いてくる。
きょろきょろ周りを見ながら歩を進めるが、やはり見知った場所ではなかった。
せめて、登山者でも見つけられたら……そう思っていると、運のいいことに一本の道に出た。
明らかに人の手がかけられた道だ。
これをたどって行けば、最悪でも人のいる場所に着ける。
吉人は、ほっと息をついて道を歩きだした。
未だにここがどこなのかよくわからないが、そんな疑問はどうでもいい。
人に会うことができればいくらでも聞けるのだ。
吉人は意気揚々と道を進んでいく。
だが、何か音が聞こえた気がして立ち止まった。
ガサ、と木葉が擦れ合うような音。
ちょうど木の枝を揺らしたときに出る音だ。
その大きさと方向からすると、どうやらこの近くらしい。
動物の可能性が高いが、もしかすると人かもしれない。
興味をそそられた吉人は、ゆっくり音のする方へ近づいた。
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