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少し道を反れただけで、吉人は開けた場所に出られた。
音の原因はすぐにわかった。
そこそこ高い木の枝に、長い黒髪の少女がロープを引っかけていたのだ。
見たところ歳はさほど吉人と離れていない。
背は低くて、吉人の肩くらい。
薄いピンク色のふわふわしたワンピースを着ていて、黒髪とともに微風に揺れている。
その少女は何度も引っかけようとロープの端を枝に投げていた。
なかなか思うようにいかないようだったが、なんとか納得のいくところにかかったらしい。
少女はロープを引っ張って落ちないことを確かめだした。
また木葉が音を立てて、いくつかはひらひらと落ちていく。
確認が終わると、少女はロープのもう一つの端をきつく結んだ。
それで少し大きめの輪を作り、同じように丈夫なことを確かめる。
「……おい」
思わず少女に声をかけた。
一連の作業を見ていた吉人はどうも悪い予感がしてならなかったのだ。
少女はすぐ反応して、驚いたようにこちらを向いた。
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