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「お前、何やろうとしてる?」
吉人は全身を緊張させながら尋ねた。
すると少女は驚いたような顔を引っ込め、侮蔑の眼差しをこちらに向けた。
「うるさい」
「…………は?」
「なんであんたみたいなのがここにいるのよ。わたしに何か用? ないならとっとと消えて。今忙しいんだから邪魔しないでよ」
少女は不快そうな顔をしながら早口で言い放った。
吉人には嫌でもわかる。
この少女は初対面の自分を理由もなしにバカにしている。
「とにかく、わたしの前から消えて。今すぐに」
そう言った少女は再びロープの輪に視線を戻す。
その輪は少女の頭が易々と通る大きさだった。
嫌な予感は少女の真剣な表情でさらに増す。
「やめろよ!」
緊張を解かずに吉人は少女へ近づいた。
「何があったか知らねえけど、それで楽になれると本気で思ってんのか?」
「うるさい。ほっといて」
「ほっとけるかよ。ここまで何するかわかってて止めない奴はいない」
「うるさいって言ってるでしょ!!」
少女が、何も知らないまま止めようとする自分の言葉を拒むことはわかっている。
だからといって、これを見過ごすわけにはいかない。
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