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少しダークな気持ちになりながら、焼けたパンケーキを皿に重ね盛り、カフェオレ、シロップ入れ、食器をトレーに載せた。如月さんの元へ運ぶ。
「お待たせしました」
テーブルに音を立てないように皿を置く。如月さんは、パンケーキの甘ったるい香りに頬を緩めた。
「今朝のも美味しそうだね。頂きます」
「ごゆっくりどうぞ」
俺は背中で食器の触れ合う音を聞きながら、カウンターの中に戻った。
何気なく、壁掛け時計を見上げる。
八時二十八分。
店を開けてから三十分近く経っていた。
いつもこの時間帯はお客さんが少ないが、特に今日は、如月さん以外にお客さんは居なかった。
貼り紙の効果だな。この調子なら、店を閉めるのに時間は掛からないだろう。
ええ、行くのは諦めてませんよ?
「『学校に来るな』って事は、何か行事が有るのかな?この時期だと、三者面談とか?」
不意に話し掛けられた。如月さんは口にパンケーキを含んでいるのか、少し声が籠って聞こえる。
『食べているときに喋らない』って教えられませんでした?
「授業参観ですよ。その後に懇談会がありますが、俺は帰ります」
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