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遥の買い物に付き合わされたオレだったが、今度は遥がオレのイザコザに巻き込まれる形となった。
(いや? 違うな……あくまでも遥が自分の意思で椅子に座ったんだからな)
そんな事を考えていたオレは、老人の口から放たれた言葉に即座に反応する。
「天中……殺!?」
オレと遥は思わず顔を見合わせた。
遥の相を見ていた老人は確かに《天中殺》という言葉を言い放った。
「いやいや、明らかに縁起悪い言葉だろ? それって……オレ達の事からかってんの? じいさん」
「からかってなんかおらぬよ……そもそも天中殺とは凶なる事が訪れ、災いをもたらすと誤解されがちじゃがのう、良い方へと転換させる転機という意味も含まれておるのじゃよ」
「それにしてもよ……」
無料だろうが何だろうが、仮にも本職であろう人間の口から一般的に不吉な言葉を言われれば誰だって不安な気持ちになるのは当然だ。
事実、言われた本人の遥は不安げな表情で俯いてしまっている。
「だったら……どうすればいいんだよ! 遥の運気が良くなるにはさ!」
遥の気持ちを代弁するかのように、少し興奮ぎみに老人に詰め寄る。
「運命を……自分に起こりうる運命を素直に受け入れる事じゃ……さすれば自ずと道は開けるじゃろう」
曖昧な老人の言い方に、遥は今にも泣きそうな顔をしている。
「は? そこまで言っといて適当な事言ってんじゃねぇよ! いつ何が起こってどうしたらいいのかって聞いてんだよ!」
気が付けば、オレは老人の胸ぐらを掴んでいた。
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