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家を出たオレは、駆け足で昨日の易者がいた場所へと向かいながら携帯を耳にあてがう。
「……auお留守番サービスに接続します……」
(チッ! やっぱ繋がんねぇか)
物事をはっきり白黒つけないと気が済まない遥の性格は、オレが一番知っている。
(ふぅ……ったく、あの馬鹿は……)
潰れたコンビニの駐車場の角を曲がると、予想通り昨日の易者が座っていた。そしてオレの予想ではそこに遥もいる筈だったのだが………………遥はいなかった。
「おい、ジジイッ!! 遥来たろ? 遥、どこ行った!」
老人の元に駆け寄ったオレは、矢継ぎ早に問いただした。
「やはり、居なくなりおったか……まぁ、そう興奮するでない。ここには来ておらぬし、騙すつもりも無かったのじゃが、実を言うと嬢ちゃんが居なくなる事も、主がここに来る事もわかっておったんじゃ」
それを聞いて更に頭に血が上り、机をバンッ! と叩いて叫ぶ。
「やっぱ何か知ってんのか! 遥は……遥はどこ行った!」
「落ち着けと言うとろうがぁっ!」
今までの穏やかな表情を急変させた老人に一喝され、オレは思わずたじろいて黙ってしまった。
「説明するから、とりあえずそこに座りなさい……」
どこか威厳のあるような声。
その声に気圧されて、湯だっていた感情が少しだけクールダウンしていた。
とにかく、この老人の話を聞かない事には何も始まらないと悟ったオレは、おとなしく椅子に腰かける事にした。
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