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「で、その《アナザーワールド》って場所に遥がいるって事か?」
「絶対にとは言い切れぬが、恐らくその異界人に連れて行かれたと思って良かろう。しかしだな……」
「いや! ちょっ、ちょっと待ってくれ! 遥は……遥は拐われたのか?」
「あぁ、それはほぼ間違いない。じゃが、救い出す方法が無い訳でもない」
「方法? 方法って何だよっ! じいさん!」
昨日の様に胸ぐらを掴みこそはしなかったが、オレは再び老人に詰め寄った。すると、その言葉を待っていたかの様に老人は静かに口を開く。
「お主が助けに行くのじゃよ……浦沢翔太」
(お主がって……オレが? ってか、何でオレの名前……)
いきなり名乗ってもいない名前を呼ばれた事で、頭が少し混乱しつつあった。
(ふぅぅ…………っ)
オレは目を閉じて老人に向けて掌を広げ、待ったの意思表示をした。
話の状況を頭の中で整理しつつ、暫く考え込む。
この老人が、何かを知ってるのは間違いない。ただ、今までの話は簡単に信用できるような話じゃないし、全てを鵜呑みにして行動するのは浅はかな気もする。本音を言えば、少し馬鹿馬鹿しい話だと思った。
更に……オレの名前を知っていた事は置いといたとして、アトランティス帝国? 人類の存亡? アナザーワールド? まるで、漫画か映画にでも出てきそうな単語だらけじゃないか。
仮に、その世界が実在するとして、得体の知れないその世界に行き、遥を助け出して無事に帰ってこれるかどうかも分からない。
(ん……待てよ?)
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