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その漫画のような夢物語を聞きつつも、遥の事が心配で仕方ない。
「嘘くさい話だけどよ……その話を信じるとしても、一体、オレと遥に何の関係あるっていうんだ?」
「ふむ。単刀直入に言うと、主ら二人……つまり、翔太と遥はその二つの世界同士の争いに深く関わり合いを持った者達の血縁者なのじゃ……遥に関して言えば、異界人が地上制覇するのにとても重要な役割を持つ…………」
突然、老人が口ごもる。
「じいさん……?」
「あ、いや、それはまだよかろう……とにかく、お主は行かねばならぬのじゃ。どうじゃ? 話は大体、把握できたか?」
「う~ん……」
「まぁ、突然こんな話をされても、信じられんのは無理も無い事よの……よろしい! 然らばこれより証拠を見せよう!」
そう言うと、老人は傍らに置いてあった小道具の中から、日本刀を取り出してオレに突きつけた。
(おいおい、真剣じゃねぇだろうな……)
「抜いてみろ。翔太」
戸惑いつつも、言うがままに手渡された日本刀を鞘から抜いてみると、何の抵抗もなく鞘から抜け出た光り輝く刀身が、その姿を現した。
刹那! ドクンッと言う音と共に鼓動は急激に高鳴り体内の細胞全てが活性化され、身体中に力がみなぎるのを感じる。
「その刀の名は《龍神刀》邪なる者を斬りうる力を持った唯一無二の破邪の神刀じゃ。そして、ある血脈を持った者で無ければ鞘から抜く事すら出来ぬ……。翔太、主はその刀を持ちて、アナザーワールドの異界人達と闘わねばならぬ宿命なのじゃ!」
老人の表情に、嘘や冗談を言っている様子もない。
それよりも、オレの今の状態……髪の毛は逆立ち、筋肉が膨張して、体もひと回り大きくなった気がする。更に気分を例えるなら、極度の興奮状態。それでいて頭の中は冷静で、あり得ない程心は落ち着き、穏やかだった。
日本刀を手にしただけで、こんなに風貌や感情が変化する事など、常識的には考えられないだろう。
だとすると、やはり老人の話は全て本当だと言えるのか?
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