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龍神刀を鞘に収めると、元通りの体となる。
「でもよ、これが必要って事は、異界人を斬る……というより場合によっては殺さなきゃなんねぇって事か?」
刀を返しつつ、老人に問う。
「察しがいいな。恐らく主がアナザーワールドに行くと、異界人が有無を云わさず襲ってくる事じゃろう。何も知らずに生きてきた主にとっては酷な話かも知れぬが……じゃが、安心せい。まだ覚醒こそはしておらぬが、お主には既に奴らと渡り合えるだけの身体能力が備わっておる。刀を抜いた時、強い力を感じとったはずじゃ」
持ち歩くのに目立たぬ為か、龍神刀を白い布で覆うと再びオレに手渡した。
この龍神刀の力……オレと遥の名を知っていた老人……そして、事実いなくなった遥……すると、やはり……
「どうしても……行かなきゃなんねぇみたいだな……わかった。とりあえず信用するよ、じいさん」
「儂の名は時雨じゃ。早速じゃがあまり時間に猶予がない。儂と共にいくぞ、空間門へ」
そう言って立ち上がった時雨の姿は、今までしょぼくれた印象の老人とは思えない程、凛としたものだった。
「ひとつ……言って起きたい事がある」
手渡された龍神刀を持ったまま、時雨の目を見据えて言った。
「人類の存亡を賭けてとか、強い使命感とか関係なく、オレは遥を取り戻しに行く……それでもいいか?」
「…………あぁ、それで構わぬよ」
こうして、オレは遥を救う為、アナザーワールドへ向かう事を決意した。
「それで? その空間門ってのは一体何処にあるんだ?」
「霊峰富士……青木ヶ原樹海」
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