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(千二百年前って、マジかよ?
……てか、海底と湖底って繋がってんのか?)
話を聞けば聞くほど眉唾モノの話ではあるが、龍神刀を抜いた時の感覚を思いだし、更には遥を救う為には時雨の事を信用するより他に無いと思い直したオレは、変に勘ぐったり疑ったりするのをやめる事にした。
「着いたぞ、翔太。空間門じゃ」
やがて、少しばかり開けた場所に着いた所で時雨が立ち止まった。
「空間門……」
そこには、風穴・氷穴を代表とする樹海近辺に多数見られる洞窟のような穴が、オレを待ちわびていたかの様に大きく口を開けていた。
「この中にある結界に守られた門。その先は、もうアナザーワールドじゃ。よいな……後には退けぬぞ」
オレの覚悟を確認するかの如く、力強い眼光を放ちながら聞く時雨に対して、オレも負けじと力強く頷く。
「上等だ。ここまで来て退けるかよ」
くるんでいた布を放り投げ、龍神刀をベルトに差す。
「龍神刀は常に帯刀しておること。お主はまだ、龍神刀の力を借りなければ奴らと闘う事が出来ぬ。それと……」
腰の刀を指差し、コホンと咳払いをして時雨が言う。
「刀の差し方が逆じゃ。刃が上を向いておらねば刀は抜けぬ」
「へっ!?」
「頼むぞ! 翔太」
恥ずかしさを誤魔化すように、ベルトの龍神刀を差し直したオレは、両頬をパァンと叩いて気合いを入れた。
「おう! サクッと遥助け出して来るわ!」
アナザーワールドから遥を救い出す事が出来るのは、オレだけなんだ。
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