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洞窟の中に入ると、上部からつららのような大きな氷柱が下がり、溶岩壁から受ける威圧感に圧倒される。
その、おどろおどろしい雰囲気に呑まれぬように、オレは腹の底から勇気を絞り出す。
更に五十メートルほど進むと、注連縄(しめなわ)を張り巡らせた、ちょうど人が一人くぐり抜けられる程度の鳥居が見えてきた。
「翔太、向こうに行ったらまず誘い人(いざないびと)と言う人物を探し出すのじゃ。その誘い人が主の手助けをしてくれよう」
「誘い人って?」
「ふむ。まぁ、細かい説明は省くが、来るべき時の為にアナザーワールド側に潜入しておる護り人。と言った所かの」
誘い人……ねぇ。
「つか、そう簡単に見つかんのか? その誘い人は……」
「大丈夫じゃ。龍神刀が導いてくれるからの。向こうに行けば、自ずと誘い人にたどり着けるはずじゃ」
「案ずるより……ってやつか……。よし、わかった! じゃあ頼むわ、時雨。あまり時間ねぇんだろ?」
「うむ。では、結界を解いた後、一気に空間門を駆け抜けよ!」
そう言うと、時雨は印を結び呪文のようなものを唱え始める。すると、鳥居の奥が僅かに光り出し、その光は瞬く間に鳥居全体を覆いつくした。
「行けぃっ! 翔太! 行って遥を助け出して来るのじゃ!!」
「おうっ!!」
オレは龍神刀を力強く握り、まばゆい光の中へと走り込んで行った。
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