一敗地に塗れるが如く

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  鬱蒼と生い茂る森林は、地上のそれと全く違わず、見渡す限り広大に広がっていた。 (おいおい……こんなに広いのかよ……) 予想以上の広さに遥を探し出す事が困難だと察したが、時雨の言葉を思い出して、下りられそうな足場を探す事にした。 (誘い人を探すんだったな……) 滑り落ちないように注意しながら、オレは慎重に下り始める。 「ようこそ……ハーデス・ポセイドンへ」 「っ!?」 もうじき下に辿り着くという所で、いきなり茂みの中から声がした為に、手を滑らせておよそ四、五メートルほどの高さから落ちてしまった…… が、二回程、壁面に蹴りを入れるような動きで重力を殺して、怪我する事なく着地したオレは、声がした方へと身構える。 「ふふふ……流石というか、うまく着地するもんですねぇ。ようこそ、初めまして……と言いたい所ですが、早速、貴方には死んで貰います」 パチパチと手を叩きながら近づいてくるこの男。 蒼い長髪をなびかせて、腰には螺旋の剣を携えている。その好戦的な眼差しと、丁寧な言葉遣いながらもトゲのある言い回しから見受けるに、少なくとも誘い人では無いようだ。 (いきなりかよ!) その男から発せられる殺気に反応するようにして、オレは無意識に龍神刀を抜く。 「ほう? 既に素質はあるようですね。 ……ならば、やはり。ここで潰しておかねばならぬようです」 逆立った髪をみて、そう呟いた男の額で三つ目の眼が見開かれる。  
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