一敗地に塗れるが如く

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  三つ眼の男が剣を構えたかと思った瞬間、剣先がオレの心臓めがけて物凄い速さで伸びてくる。 「がっ!!」 咄嗟に龍神刀を下から持ち上げ男の剣が突き刺さるのを防いだ。 「待った無しかいっ!」 叫ぶと同時に受けた龍神刀を男の脳天めがけて頭上から振り下ろすが、男は半身スウェーバックするだけでこれをかわす。 「はははっ。大した反射神経です! だが……」 男を睨み付けたオレだったが、左腕に微かな痛みを感じる。 「まだまだです」 オレの初太刀をかわしつつ放った男の二の太刀が、オレの腕を掠めていた。 「くっそ!」 オレは夢中で刀を振るったが、繰り出す技全てを余裕の表情で捌いていく。 ヒュンッヒュンッと龍神刀の風切り音だけが虚しくこだまする。そして、その音を耳にする度にオレの体力も削り取られてゆく。 やがて責め疲れ、はぁはぁと肩で息をするオレを見下した表情で見つめた男は、 「そんなものですか……話になりませんねぇ。では……そろそろ終わらせましょうか」 と、言うが早いか無数の連突きを放ってきた。 「くあっ!」 必死にかわすも、腕・足・顔・腹と、オレの体は徐々に切り裂かれて行く。 そして、ついにはキィンッと言う金属音が響き渡り、男の剣によって龍神刀を弾き飛ばされてしまう。 「あ……」 あちこちの肉や筋を斬られ、大量の血を流したオレは、最早まともに立っている事すら出来なかった。  
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