一敗地に塗れるが如く

5/13
前へ
/162ページ
次へ
  「貴方は我が国に災いをもたらす悪魔の子……呪うなら己の運命を呪うのです」 見上げるオレの鼻先に剣が突き付けられる。 「では、さようなら」 (こんな所で……悪ぃな、遥。どうやら助け出すのは無理っぽいわ) 覚悟を決めて目を閉じた瞬間、何処からともなく放たれた矢が、三つ目の男目掛けて風を切り裂きながら向かって来た。 風切り音を聞いた男の剣が、咄嗟に弓矢を弾き飛ばす。 「ちっ! あと少しの所で……」 その後も続けざまに放たれた矢は、正に文字通り矢のように男に降り注ぐ。 「邪魔が入ったようですが、必ず貴方を殺しに行きますよ! 覚悟しておきなさい!」 無数の矢を一つ残らず弾きながら叫んだ男は、元いた茂みの中へと消えていった。 (たすかっ……た……) 安心した為か体中の力が抜け、その場に崩れ落ちる寸前に、誰かがオレを抱き抱えた。 「間に合ったみたいだね」 朦朧とする意識の中でその声を聞いた瞬間、オレは完全に意識を失った。  
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加