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「貴方は我が国に災いをもたらす悪魔の子……呪うなら己の運命を呪うのです」
見上げるオレの鼻先に剣が突き付けられる。
「では、さようなら」
(こんな所で……悪ぃな、遥。どうやら助け出すのは無理っぽいわ)
覚悟を決めて目を閉じた瞬間、何処からともなく放たれた矢が、三つ目の男目掛けて風を切り裂きながら向かって来た。
風切り音を聞いた男の剣が、咄嗟に弓矢を弾き飛ばす。
「ちっ! あと少しの所で……」
その後も続けざまに放たれた矢は、正に文字通り矢のように男に降り注ぐ。
「邪魔が入ったようですが、必ず貴方を殺しに行きますよ! 覚悟しておきなさい!」
無数の矢を一つ残らず弾きながら叫んだ男は、元いた茂みの中へと消えていった。
(たすかっ……た……)
安心した為か体中の力が抜け、その場に崩れ落ちる寸前に、誰かがオレを抱き抱えた。
「間に合ったみたいだね」
朦朧とする意識の中でその声を聞いた瞬間、オレは完全に意識を失った。
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