易者

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  初夏の清々しい朝日は、気の早い蝉の鳴き声を誘い、通学路の街路樹は清涼な空気を肺に送り込む。 本来なら、両手を拡げてそれを一日の活力源にしたい所だが、そうすると自然に大きな生欠伸になってしまう。 (ふぁ~あ。もう少し早く寝とくべきだったな……) 眉毛にかかる程度の前髪を右手でかき上げると、昨晩、遅くまでネット対戦型格闘ゲームに没頭していた為に出来たクマだらけの両眼に、燦々と降り注ぐ陽光が襲いかかる。 (うおっ! 眩しっ! ってか、ヤベェ。このままじゃ遅刻だ) オレの通う地元の高校は、特に進学校という訳でも、不良が集まる落ちこぼれ学校という訳でもない。至って普通の男女共学校だ。 まぁ、普通がどういう基準かは人それぞれなのだろうが。 そんな普通の公立において、トップクラスの学力を持つ訳でもなく、かといって赤点常習者に名を列ねる程でもない。 まぁ、可もなく不可もなくってとこだ。 ただ、運動神経の方は、自分で言うのも何だが学年でも上の方だと思う。最近は落ち着いてきたが、入学当初は運動部の勧誘がしつこくて困ったりもした。 とにかく、運動神経が人並みより良い。裏を返せばそれしか取り柄がない何処にでもいそうな高校二年生のオレが、人類の命運を握る程大きな宿命を背負っていく事になるとは…… この時は未だ知る由もなかった。  
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