易者

6/8
前へ
/162ページ
次へ
  結局、色んな店に付き合わされた挙げ句、雑貨屋でアクセサリーをひとつ買っただけの遥と家路についたのは、陽も沈み始めた夕暮れ時だった。 「ったく……。女ってのはどうしてこう、長い買い物になるかなぁ……」 頭の後ろで腕を組み、鞄をぶら下げてぶつぶつ文句を言いながら歩く。 「文句言わないの。約束通りマック奢ってあげたでしょ」 「にしても、長すぎじゃね? 買うつもりもねぇのにあっちこっちよ……」 「そうゆうモンなの! 女の子は! それに、いずれ翔太も誰かと結婚して所帯持つんだから、その予行練習だと思ったらいいじゃん」 「予行練習ねぇ……」 確かにそう言われればそんな気もするが、何だか上手くはぐらかされた感じだ。 そんなやりとりをしながら歩いていると、道端で椅子に腰掛けた老人がこっちを見ている事に気付く。 見覚えのあるその老人は、そう……紛れもなく朝の易者だった。 「ねぇ……翔太。あれってもしかして……?」 「あぁ。さっき話した朝のジジイだ」  
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加