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シカトして老人の横を通り過ぎようとすると、案の定老人が話かけてきた。
まぁ、なんとなく予想はついたが。
「また会ったな……少年よ……」
まるで運命的な出会いみたいな言い回しでサラッと言いやがった。
「朝も言ったろ? じいさん。そんなに暇じゃないって……」
言いながら横を通り過ぎる瞬間、老人がオレの袖口を掴んできた。
「おいおい、勘弁してくれよ……どういうつもりだい? じいさんよ」
「すまんな……手荒な真似をするつもりもないが、やはり主の相、非常に気になるのだよ。少しでいいからこのジジイの戯言に付き合ってくれぬか?」
(何だ? こいつ?)
反対の袖口をつまんでいる遥と目を合わすと、心配そうな顔をしてオレを見ている。
「行こ……翔太……。あんまり関わらない方がいいかも……」
……同感。
「なぁ、じいさん、オレの方こそ手荒な真似したくねぇんだケド……手ぇ離してくんねぇかな?」
すると老人は遥に視線を移してこう言った。
「さっきから気になっていたのだが、そちらのお嬢さん。彼も珍しい相をしているが、お嬢さんの方がもっと珍しい相をしておるわ…………どうじゃろう? 時間もとらせないし、料金もいらぬから二人共少しだけ易を見させてもらえぬじゃろうか……」
「いやいや、だから忙しいんだってオレ達は……。なぁ! 遥」
「…………」
遥の返事が無い。
「遥?」
少しモジモジした様子の遥が、耳を疑うような言葉を放つ。
「……あの…………本当にタダで見てくれるの?」
(はいぃぃぃっっ……!?)
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