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拳聖は一瞬ドキッとした。麗はすぐ視線を店内に向けた。
「素敵なお店でしょう。」
「ああ、雰囲気も落ち着いていいし、何より珈琲が旨い。」
麗は曇った顔を再び笑顔に戻し「ふふ」と笑った。
「ここね、千紗と浅子とでよく来たんだ。千紗がね、おじさんみたいに渡邊さんが言ったみたいな事言ってたんだぁ」
「………」
再び視線を拳聖に向け、
「私達、好きな人が出来たら此処で紹介し合おうと約束してた」
麗の瞳がだんだん潤んできた。それを見た拳聖は不謹慎ながら「綺麗だ」と思った。
「千紗ね、渡邊さんの事…好きだったんだと思う。小さい頃からの付き合いだから、何となく分かったの。だから、此処に来てもらったの。また、此処に来て欲しいから…千紗と一緒に。」
麗は拳聖の目から視線を逸らさない。拳聖は返答に困った。
「その為には、私は危険な事なんて怖くないわ」
麗の方が視線を逸らし、紅茶を飲んだ。
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