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恐る恐る、周りをキョロキョロ見回しながら、隠れるようにして歩く。
登校時の賑やかな玄関。
下駄箱は学年順に並んでいるから、誰にでも会う可能性はある。
あたしは階段を駆け足で上がった。
幸い教室にたどり着くまでに、葵君に会うことはなかった。
席に座って、ハァとため息をつく。
…まぁ葵君には部室で会うことがほとんどで、校内で見かけることはめったにないんだけど…
自分の教室にいても、葵君がいないか確認してしまう。
…だって、昨日あんなことがあったし…。
『……』
思い出して、ボッと顔が赤くなる。
あの後、あたしはしばらくボーっとして、気付いたら閉校時間寸前で、慌てて校舎から出た。
家に帰ってもあのことが頭から離れなくて、大好きなアニメも観ずに部屋でまたボーっとした。
考えてたことは2つ。
どうして葵君はあんなことしたのかということ。
あと、この胸の変な感じは何だろうということ。
考えても考えても、どっちも答えがわからない。
だから今日、葵君にもし会ったらどういう風に接したらいいのかもわからない。
『ハァ~…』
机にベターッと伏せる。
「…紗英何してんの?」
パッと顔を上げると、奈々が立っていた。
「おはよ。どうしたの?そんなため息ついちゃって」
『…奈々~!』
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