817人が本棚に入れています
本棚に追加
「っ!嫌いになんか…!」
恭平はそこまで言うけれど、ぐっと言いかけた言葉を飲み込んだ。
その先を、言おうとはしない。
ズキ……ッ!
痛い…苦しい。
ねぇ、私たちはこんなにも遠い存在になってしまったの?
いつから?
私が、“恋”をしたから……?
恭平は険しい表情のまま、また顔を横に向ける。
「俺は…俺は、お前が辛い時も危険な目に遭っている時も、いつだって肝心な時に傍にいられなかった。
お前を守れなかった。
だから、俺はお前にふさわしくなんかな…」
「違うよ…!恭平はいつだって守ってくれた!
私はいつだって守られてたの…。
千架とのときも、大学で男の人に襲われたときも…!」
そう言った瞬間
やっと、恭平と目が合った。
驚いて目を見開いて、私を見つめている。
「小泉さんに聞いたの。
ごめんね、私、何も知らなくて…。
何も知らずに、ずっと…!」
きゅっと、服を掴む力が強くなる。
だめ。涙が溢れそう。
私は目を閉じて、ただ込み上げてくる思いを抑えるのが精一杯だった。
「…“言うな”って、あれ程言ったのにな」
恭平はため息をついて、少しだけ笑った。
最初のコメントを投稿しよう!