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「ビールにお弁当~
お土産にご当地のお菓子はいかがですかぁ~?」
肘を付き外の景色を眺めていると、大きなワゴンを押す女性がこの車両に入ってきた。
俺は手を上げて、ビールを一缶購入する。
「……はぁ」
こんなの出張帰りのサラリーマンと同じじゃねぇか。
しかも未成年ってバレずに買えるって…
「!?」
何気なく乗車券を手に取って眺めていたら、俺は急に現実に引き戻された。
つーか、俺…
“旅に出る”って思っていながら、無意識に地元に一番近い駅までの券を買ってんじゃねぇか…!
情けねぇ。本当にノープランできたもんだから。
《~♪》
それに気づいたのは、運良くも地元に着くずっと前の都市で、新幹線到着の音楽が鳴った時だった。
とりあえず気づいたのが今で良かった。
大体“旅”が地元って…意味ねぇし。
俺はボストンバックを肩に提げて新幹線を降りた。
人込みに紛れて、ゆっくり歩を進めていく。
《ドンッ》
その時、髪の長い女とぶつかった。
「あ、すみません」
「いえ…」
女は俺ににっこり笑いかけ、そのまま人込みの中に消えて行った。
違う。あいつの笑顔は、もっと……
「…何考えてんだ、俺は…」
俺は頭を掻いて、ため息をつくとそのまま周りと同じように歩き出した。
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