3人が本棚に入れています
本棚に追加
‐ペロッ‐
謎の男は自分の拳に付着した血液を舐め取りながら駅付近の道を歩き続けていた。
勿論、帰宅時間の為周りには仕事帰りのサラリーマン、寄り道をしつくし帰宅し始めている高校生、中学生その他諸々。そんな大勢、人の居る歩道を血の付着した服や顔の男が堂々と歩いて居て気にならない人間は居ない。
サ(なっ何だあれは?人でも殺して来たのかあの男の子)
高(えっ!?なに……あれ?血?)
しかし気になりはするが直視は出来ない。直視してしまうと彼の服等に付着している血の持ち主と同じ末路しか待っていないと容易に想像出来てしまうからだ。そんな恐怖心から直視するものは誰一人としていない。ましてや警察に何て通報出来やしない。
寧ろ電話をしている者は彼の姿が目に入るや否や血の気がサーっと引いて行き慌てて携帯を切りポケットへとしまう者ばかりである。勿論、その行為は彼に誤解を生ませない為なのであろう。
〇〇(欝陶しい人間ばかり。……やはり人間は自分が一番可愛い……か。俺も少しは自分が可愛いの……かな?)
〇〇(人間の端くれならきっと俺もそうなんだろうな)
彼は自分の家に帰る為人気のない細い道へと足を向け彼が居なくなった途端に駅前に居た大勢の人がホッと胸を撫で下ろした。そして彼が現れる前と同様に駅前に活気……というより賑やかになった。
一方、彼はというと――。
.
最初のコメントを投稿しよう!