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あれから数日後、灯哉は智を自室に呼んで話をしている。
「智…やはり私は諦められない。たった一度姿を見たことしかないのに…あの咲月という女性の姿が頭から離れないんだ…」
苦しそうに自身の心情を話す灯哉の顔を見ながら智が一つ息を吐く。
「ふぅ…だから刃を動かしたんですね?」
「あぁ…刃にしか頼めなくてな…」
灯哉が刃に頼んだこと…確かにそれを考えると刃にしか可能性はなかった。
「でしょうね…私が行くわけにいかない以上、刃にしか不可能でしょう…」
しかし、刃は戻って来てはいない…単身での調査・潜入。あわゆくば咲月との接触と言うことだったが、一度連絡があってから連絡が途絶えている。
しかし、その連絡により咲月のいる場所への地図、そして潜入ルートは刃から灯哉達にもたらされていた。
そして、重くなった空気を押し返すように灯哉が言葉を口にする。
「愚かなことだが…私は刃が託してくれたこの情報を使いたい」
「刃ですら単身では及ばなかった場所だとしても…ですか?」
智の言葉に灯哉は僅かに息を飲む…灯哉が行くとなれば当然お庭番も共に行くことになる。お庭番の中でも智と並ぶ実力があった刃ですら及ばなかった場所に…自分の我が儘のためだけに共に育ったお庭番を危険に晒すことになる…
それでも尚…
「私は…一人でも行く」
灯哉ははっきりと智に告げる。
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