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その場にいた三人は言葉を発することもなく灯哉の視線の先を捜すようにして目を向けると…そこには桜姫と同じくらいの年の少女を連れた女性が梅の木の下で花を見上げていた。
遠目でもわかる程に透き通るような白い肌。少女に向かって笑いかける姿は紅色の梅と相俟って一枚の絵…舞台から飛び出した光景のように美しかった。
「確かに…綺麗やねぇ」
「えぇ…何か幻想的ですらありますね」
灯哉に続くように女性を称賛する刃に京樺も頷く。
そして、視線をまた灯哉の方に向けると灯哉はまだほうけたままの表情でジッと女性を見続けている。
「こりゃ…惚れたな」
「みたい…だな」
「ですね…」
三人が苦笑いしながら同じ結論に達する。
しかし、灯哉はそこからどうする訳でもなく、ただその女性をジッと見続けたまま日が暮れる。
とうに女性はその場から立ち去り、周りも帰り支度を始めるようになっても灯哉はただ…女性がいた梅の木の下を見続けていた。
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