恋の隙間

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 私達は交互に適当な言葉を放って、連想させ合いながら埋め合わせていく。課題は適当をいかに適当に遊ぶか。 「不思議」 「アリス」 「玉ねぎ」 「なみだ」 「未来」 「黄色」 「音楽」 「国境を越える」 「雨」 「水玉」 「嫌い」 「プレゼン」 「プレゼン嫌い?」 「嫌い。緊張する。どうして夕弥のプレゼンでは笑いが起こるのか判らない。私も笑わせてみたい」 「笑いを取ろうと頑張ったら必ず失敗するよ。まずは相手と自分の失敗を同調させる事かな。手っ取り早い。 あとは、いかに質疑応答を起こせるか。雰囲気や姿勢、表情を察知するんだ。プレゼンて実は『話す』んじゃなくて『聞く』事なんだよ 」 んー… 「やっぱり難しいよ」 「恋愛」 「ライヴ」 「綺麗」 「総務の山本さん」 「ああ、確かに」 「…」  ヤキモチが多い私を知ってるくせに他の女性が綺麗だと しらっ と認めるこの人。  あくまで適当に、されど適当にカマをかけた事に気づいてるくせに。  不機嫌な私を微笑み見つめながら「次は美雨だよ 」と彼が促す。 「満月」 「ウサギの足音」 「好き」 「夕弥!」 「 ありがとう」  ベッドの中で、真っ白なコットン素材の枕に肘を付き、私の髪にキスするこの大好きな人。  この類の簡単な言葉遊びは彼のテリトリー。  私の一喜一憂をお手玉を扱う気楽さで簡単に操作する。  いつものお遊び。  この人に乗せられたらもう  逃げるのは困難。
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