美雨

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「そうですか。良かった。それじゃあ僕は失礼します」 「あっ、ざーした!」  …不明瞭な日本語で地面に御礼を伝える自分が悲しい…。  唯一動かせる眼球が黒の革靴が目の前から去って行った事を認識した。  そして嗅覚が反応を示す。  清らかで柑橘で優しくて遠い昔を思い出す香りが鼻先に擽る。  …これはキンモクセイ?  なんだか懐かしい気持ちになる、あの人が残して行った香りだ。
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