美雨

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 ようやく頭を上げると自分の長い髪が弾かれた様に風になびくのを見て、その次には自分の視線が勝手に彼を追い求める。  両手をポケットに入れて悠々と歩き、景色に彼がいるのではなく、彼が景色を作っているみたい。  小さな頭に広い肩。  その割に細いウエスト。  あの程よい白い肌にスーツの色は際立たせる機能もきちんとプライスされていたのだろう、と納得出来てしまう位に映えている。  時々会社まで続く桜並木に気紛れの角度で目をやっている。
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