美雨

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 真っ白の木枠の全身が映る鏡を勢いよく窓辺に がらがら と引きずり、美雨は自分の後ろ姿を確認した。  伝線した箇所はちょうど膝裏からふくらはぎにかけて、よく見れば判る程度のものだった。 「…いける、うん、このままでいけるでしょ 」  駅まですぐだし通勤で利用する満員電車の中で誰かに気づかれたところでどうって事ない。  みんないかにあの空間から早く抜け出すために心を無にしてそれぞれの異空間へ逃避するんだ。  会社に着いてからすぐに履き替える事にして、鞄とキーケースを持ち、慌てて家を出た。
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