11790人が本棚に入れています
本棚に追加
「はい残念。ちゃんとお金払って下さいね」
はい、無理でしたよ。
え?大食いの武憲?あれはね、ワンコそばの事だよ。あれなら30杯ぐらいいけるんだけどな。
もう最後らへんなんて、あへあへ言いながら食ってたもん。前に座ってる雪野の視線が痛かった。
「ちょっと待てよ夏樹」
俺はいつの間にか歩き出していた夏樹に声をかけた。
「何?」
あっもう敬語でもなくなったね。
「何でこんな所で働いてるんだよ」
俺がそう聞くと、夏樹は焦っているように見える。
「べ、別にいいでしょ。どこで働こうが私の勝手じゃない」
確かにそうだけどさ。
夏樹は俺から逃げるように厨房の奥へと引っ込んだ。
「んー、ここのカレー美味しかった」
今までゆっくりと食べていた雪野がやっと終わったようだ。
「そっかじゃあ会計しに行くか」
「うん」
そう言ってレジの前に来たのはいいのだが……。
「財布が……無い」
財布がないのだ。
思い出せば俺は財布を持ってこなかった。なのに持ってると思いこんでいた。
これはやばい。やばいぞ。こうなったら最後の手段だ。
「ごめん雪野。今度必ず返すから、今日は払ってくれないか!」
俺は土下座をしながら頼み込む。
プライド?そんなもの母さんの腹の中に置いてきたわ!
最初のコメントを投稿しよう!