9人が本棚に入れています
本棚に追加
要一は、黒い覚悟を胸に商店街を歩いていた。
街は、夕方の色を刻々と深めつつ黄昏れている。
平和な街角、流れるヒトゴミ。
《世の中は、不思議だ、探し求めても見付から無いのに、諦めたその時、探し続けた運命に出会う》
何故だか要一の足が止まった。
何気なく商店街の路地に気が行った要一は、信じられない気配を感じる。
路地の奥に、立体影像の様にぼやけた片翼の鳥が自分を見詰めている。
突然、殴られた様な痛み。
心臓が普段の倍以上の速さで跳ね回る。
『なっ、何だこれは?』
胸を押さえながら、何とかこらえ、一歩足を前に出す。
………ドックン………
心臓が震える。
自分の身体に起きている異変を、要一は理解出来ない。
怖いと思う感情が、要一の身体を縛り付ける。
なのに、路地から目が離せない。
そこにいる鳥は、夢で見た自分の分身とそっくりだ。
心臓は、ますます速くなる。
めまいすら感じる。
この路地の奥に隠れている。
要一の本能が警鐘を鳴らす。
震える足を前に出す。
『やっと見つけた、やっと出会ったと魂が叫ぶ!』
心臓の鼓動は、すでに限界を軽く超えている。
心とは別の本能が身体を路地奥に導く。
初めての体験に要一は、恐怖心よりも強い愛情が沸き上がる。
最初のコメントを投稿しよう!