ガラクタな風景

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坂本 要一は、ただベンチに腰掛け桜が散るのを見ていた。 今年で32歳になる彼には、 今まで、何も無かった。 幼い頃の記憶にすら熱中した遊びや好きなスポーツも無い。 恋人や友人ですら要一を幸福に出来ない。 そこそこの頭脳とスラリとした容姿が、彼を当たり前の様に、 就職や結婚へと導き、 今に至ったが。 始めから、肝心な部分が大きく欠落していた。 要一はガラクタだった。 そんな要一の空っぽの心に唯一在り続けた気持ちが、孤独感と喪失感だった。
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