ガラクタな家族

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その日、徹は苛立っていた。 午前中に市役所の児童福祉課から来た偉そうな役人が、「愛」の身柄を引き受けに来たからだ。 人の家に勝手に上がり込み、やれ生活状況が悪いだの固定収入が無いだの並べ立て親として失格だから娘を預かると言われた。 徹は、偉そうな役人一人を、やけくそにぶん殴り、半殺しにしたが。 役人達何人かは、今度は警察を引き連れてやって来ると退散した。 どうやらこれで時間切れだと徹は腹をくくった。 何もかも失い、とうとう娘を奪い取られる事に、苛立ちを隠せない。 別に親としてだの、 一緒に暮らしたいだのが理由ではない。 働きもしない徹が何故、朝から酒を飲み、娘を食わせて来れたか? 仕掛けがあった。 徹は、軽度の躁鬱病で、精神病院に通院していた。 彼は、病院で睡眠薬を手に入れては、 金に困ると娘の夕食に薬を含まぜた。 意識の無くなった娘を裸にして写真を撮り、闇で売りさばいて生活費を稼いでいた。 徹自身もこの撮影時に自分の性欲を、自分の手で満たすのが常だった。 今日迄、 何故、娘の体に手を出さなかったのか? 徹は娘にばれるのが恐かった。 蒸発した妻の様に娘に捨てられるのが恐かった。 もし娘が妊娠でもしたらと考えると面倒臭い事になると思った。 だから、自分の都合だけで娘の身体を商品の様に扱った。 しかし、それもこれで時間切れだ。自身の股間を強く扱きながら、静かな決意を確認した。 それから一時間程が過ぎた。 娘が学校から帰って来て、玄関に立っていた。 娘は、妻によく似ている。とくに徹が下着姿で寝てたりする時の嫌悪感がにじみ出た顔が。 今玄関に佇む娘の顔が、『本当にそっくりだ』 徹の頭の中のスイッチを何かが押した。 役人を殴って血の付いた平手が、無造作に愛の頬を叩き娘を膝ま付かせた。 「何だ!その眼付きは!」 徹は激昂した。 突然の事態に気が動転して愛は、何もしゃべれなかった。 何が起きたのかすら解らなかった。 少女は家が嫌いだった。出来る事なら帰って来たくなかった。 家の中は逸も汚れていたし、 父親は常に家に居て偉そうだった。 逸も、いやらしい眼で少女を舐め回し、 部屋には嫌な臭いが立ち込めていた。 それでも今日の様にいきなり殴られたのは、初めてだった。 何があったのか、自分が何かしたのか戸惑い、脅え、恐怖した。
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