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小十郎×政宗SS
死ネタ注意
《花びらと共に》
『小十郎』
桜が散り出す頃になると聞こえる声
声が聞こえればまだ隣に居るような気持ちになり
随分と昔に居なくなったはずの愛しい人を思い出す
一瞬暖かい風が吹いたと思えば桜の花びらが舞い散り、あの頃のままの姿が目に映る
『小十郎』
もう一度声が聞こえたと思えば、ゆっくりと姿が薄れていく
思わず手を伸ばし、触れるはずのない人に触れようとすれば当然のように空を掻き
「政宗様ッ…」
目に映るが触れない愛しい人は目を細めて口角を上げると、空気に溶け込む前に言葉を紡ぐ
『小十郎…ありがとうな…毎年ここに来てくれて』
その言葉が響いた時、既に姿はなく。
だが空を仰ぎながら呟き
「当たり前です…貴方が最期に視た景色が広がる場所なのですから…」
そこには桜の木が一本植わり、花びらを散らしながら再び暖かい風が吹いた。
21年4月7日
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