プロローグ

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桜の咲く並木道にやわらかい風が吹いた。 僕たちの体を通り抜けていったその風は、そっと花びらを撫で、その身を桜色に染め去っていく。 その風はとても優しかった。 「なんか……あたたかい風だったね」 嬉しそうに君は微笑んだ。 僕も同じことを考えていた。 でも口にするのは恥ずかしいから僕は返事をしない。 そのかわりポケットに突っ込んでいた左手を、君の右手に絡める。 突然の僕の行動に君は驚いていたけど、はにかみながら繋いだ手にそっと力をこめてくれた。
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