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何気無く牧が言った言葉に一瞬期待をした。
そもそも何であんなに短い夢だったのにこんなに気になるんだろう。
――東條、待って。――
あの『東條』とかいう人のせいかな。夢の中では影が小さくて彼の顔を確認できなかったから、牧の言う様にまた夢に見たら今度は確認しよう。
その日の夜、牧の言った通りになった。
――『・・ゆ。まゆ。』
ん?何?誰か呼んでる?
『こんな所で寝るなよ、繭』
この声!
『東條さん!?』
ゴンッ!!
『イタッ!』興奮のあまり飛び起きた私は、東條さんとおもわれる人物の頭に頭突きをしてしまった。
『ご、ごめんなさい!』
『少しは落ち着いたらどうだ!』
彼の声は怒っていた。当然だろう。私自身かなりの勢いでぶつかったせいで目の前がクラクラしている。おかげで、顔を確認できないまま彼は後ろを向いてしまった。
『あの、東條さん。』
気をとりなおして声をかけた。すると彼がふりむくのと同時に霞がかかった。
『嘘ー!せっかくまた会えたのに!!まだ夢覚めないでー!』
そんな私の叫びも虚しく東條さんの姿は消えてしまった。
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