ICU協奏曲

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その日、私は昼食を終え、何をするでもなく街を歩いていた。 私はこの四月に晴れて大学生になった。いわゆる、女子大生である。 少しくすぐったいけれど晴れ晴れとした気持ちで、歩いていた時だった。 「さっちゃん? 久しぶり!」 突然声をかけられて、私は驚いて振り返る。そこに立っていたのは……。 「あっちゃん? うそぉ、よくわかったね!」 中学の友人に、私は思わず歓声を上げる。 卒業して、別の高校に進んだ私達。久しぶりの再会だった。 そのまま私達は、喫茶店に直行し、たわいないおしゃべりに花を咲かせた。 一通り近況を語り合った後、彼女はおもむろに話題を変えた。 「ねえねえ、ちぃちゃん覚えてる?」 「ちぃちゃん? あのバスケ部のエース? 覚えてるけど……」 どうかしたの、と首をかしげる私に、彼女は言った。 「あのね、ちぃちゃん、ICUに入ったんだって」 「あ……ICU? 何で?」 思わず大声を上げてしまった私は、口をつぐみ、周囲を見回す。
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