ICU協奏曲

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幸いにも、お客はまばらで、私達を気にしているような人はいなかった。 大きく息をついてから、私は改めて問いかける。 「ICUって……ちぃちゃん、高校行ったら全国目指すって……それに、お金もかかるでしょ?」 「何か、聞いた話だけど、二年の九月に部活やめて、バイトでお金貯めてたみたい。親御さんに迷惑はかけたくない、って」 その言葉に、私はグラスをみつめた。 「そんな……。で、ちぃちゃん、今どこに?」 「んーんとね……あそこ、ちょっと不便なんだよね。中央線だと、吉祥寺か武蔵境からバスだったと思うけど?」 彼女の言葉に、私の頭は真っ白になった。 思い当たる病院は、赤十字武蔵野病院か、杏林大学付属病院。 どっちも全国から患者さんが来る有名な病院だ。 そうすると、ちぃちゃんはもう、バスケができないのではないか。 グラスの中の氷が溶けて、からん、と高い音をたてた。 そして、意を決して私は口を開いた。 「……で、ちぃちゃんはいつまでいないといけないの?」 「いつまでって……最低四年はかかるんじゃない?」 戻ってきた言葉は、何とも冷淡に聞こえた。 私の頬を、涙が伝い落ちた。
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