ICU協奏曲

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「ちょっと、さっちゃん、どうしたの? 急に泣き出して……」 「だって、あんなに元気だったのに……ひどすぎるよ……」 「そりゃ、最初のうちは慣れなくて戸惑うかもしれないけど、大丈夫だよ、ちぃちゃんなら」 「でも……そんなひどい病気なら、教えてくれてもいいのに……いきなり入院で、しかも集中治療室なんて……」 重苦しい沈黙が続く。 それを破ったのは、笑い声だった。 「何がおかしいのよ!? ちぃちゃんが大変だって……」 ひとしきり笑ったあと、彼女は滲み出した涙を拭いながら言った。 「ごめんごめん。だって、私、ちぃちゃんが入院したなんて、一言も言ってないよ?」 「でも……ICUに入った、って……」 「入ったよ。確かに。International Christian University、に」 「え?」 思いもかけない英単語の羅列に、私は目を丸くした。 やれやれ、とでも言うように、彼女は続けた。 「だから、ICUに入学したの。国際基督教大学。わかる?」 唖然とする私の前で、彼女は再び笑い始めた。 終
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