左利き保護法案

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はじめにお断りしておきますが、この話はフィクションであり、実在する同名の個人、団体、機関、国とは一切関係がありません。 2●●●年 日本 世論調査では70パーセントを超えるという驚異の支持率を誇る内閣総理大臣山田太郎民自党総裁は、所信表明演説に於いて、議員はもとより全世界を唖然とさせる法案をぶち上げた。 後に言う『左利き者生活への援助に関する法』、通称『左利き保護法案』がこの日はじめて、明るみに出たのである。 ……庶民党田中一郎代議士の代表質問に対する答弁より 先程この法案にどんな意味があるのか、とのご質問ですが、私は国民生活に於いて大いに有益であると考えます。 ご高齢の方や、先天、或いは後天的に身体にハンディキャップを追った方々に対するバリアフリーはほぼ徹底されました。 にもかかわらず、少数派である『左利き』の皆さんは未だに日常生活に於いて大なり小なり不自由を感じているのが現状です。 これは法の下の平等をうたった日本国憲法に違反していると言えましょう。 何より、幼い子どもたちの中には、みっともないだの何だのと、良くわからない理由で親から右利きになることを強要される例も後を絶たない。 これは基本的人権の尊重にも反しております。 私は、左利きの皆さんが安心して暮らすことの出来る、真の平等な世の中を創りたいのであります。 ……具体的にどのような点で不便を感じているのか、と、ヤジが飛ぶ それが多数派のおごりなのです。 ドアノブから電卓、自動販売機、はさみ、それら日常生活に溢れている雑多な物は、殆どが右利きの利便性を考えて創られているのです。 ケガなどで利き手である右手が一時的でも使えなくなった方なら、その不便さをご理解頂けるでしょう。 極論となりますが、列車に乗るために切符を買い、改札を通る。 これだけのことに左利きの方々は、我々が思いもよらないストレスを感じているのです……(以下略)
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