58人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
目元が仕事仕様に鋭く変わった藤島店長が静谷さんを見た。
静谷さんが僅かに頷く。
「最近、ちょっとした事故が続いています。今は未だ大した事になってないものの、そんな気の緩みではいつ大事故につながるか分かりません。オイル交換ひとつにしろ、お客様の命を乗せている車を扱っているという自覚を持って下さい。」
決して大声ではないのに、静谷さんの声はよく響く。
落ち着いた深みのある声が、スタッフの意識を高めていく。
作業員の中では最年少ながら工場長を務め上げているのは、技術や知識だけではない。
私は引き込まれるように静谷さんを見つめていた。
その、すっかり見慣れた瞳を。
「では、今日も1日よろしくお願いします。」
藤島店長の締めを聞き、皆がそれぞれの仕事に取り掛かる。
この瞬間がいちばん好きだ。
最初のコメントを投稿しよう!