キツネ

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そのオオカミは所々毛が抜け落ちていて、ちょっと見たところ、年寄りのようでしたが、目つきは鋭く群れのボスのような感じさえしました。 しかし、おかしな事に群れが居る様子はなく、それどころか老オオカミには、ごちそうである子キツネを襲う様子もありませんでした。 ただ、子キツネを見ているだけでした。   子キツネが泣き止み、老オオカミが居るのに気が付くと、老オオカミは背中を向け去って行きました。 親兄弟以外に自分を襲おうとしなかった老オオカミに、特別な感情を感じたのか、珍しいものが好きなキツネの習性なのか解りませんが、子キツネは老オオカミの後を追って行きました。   少し歩くと、そこには食べかけの小鹿が倒れていました。 老オオカミが子キツネを襲わなかったのは、お腹一杯だったからのようでしたが、これで老オオカミが群れの中の一匹でない事がハッキリしました。 そんな事も考えないで子キツネは、久しぶりのご馳走でお腹を一杯にしました。 そして食べ終わった時には、その老オオカミは居ませんでした。   犬ほどではありませんが、子キツネは匂いを追って老オオカミを捜しましたが、見つける事は出来ませんでした。 一匹で狩りを成功したり、匂いも残さず去って行く老オオカミが、どれだけ凄いかなんて考えもしないで、子キツネは何日も何日も老オオカミを捜しました。   結局子キツネは老オオカミを捜せませんでしたが、この二匹は出会う事が出来ました。 老オオカミが少し高い崖の上から子キツネを見つけたのです。   老オオカミは、子キツネが解るように小石を一つ蹴りました。 その石は子キツネの近くに落ちて、やっと子キツネが老オオカミに気が付いたのです。 喜んで駆け寄ろうとした子キツネに向かって、老オオカミも崖を飛び降り、子キツネに向かって行きました。 しかし、その姿は向かっていると言うより、襲って来ているようでした。
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