第一部 一章 白色の生活

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――シュパッ 誰もいない朝日差し込む真夏の体育館。 聞こえてくるのはボールが跳ねる音と、ゴールをボールが貫くときになる気持ちのよい音だけ。 「暑ちぃな……」 そう呟きながら練習用のTシャツで汗を拭い、沢山のボールが入っているケースからボールを取り、シュートフォームに入ろうとする一人の少年。 彼の名は――― 「爽太!」 そう、彼の名前は葉山爽太。 バスケ部の主将。学校でもちょっと名の通った有名人。 爽太は手に持っているボールを地面に落とし、声のした方へと目を運ぶ。 「なんだ、陽菜かよ」 体育館の扉の方から、ほんわかと優しい笑みを浮かべ、近づいてくるショートカットの女の子。 彼女の名前は宮本陽菜。 「彼女に向かって、何だとは失礼じゃない?」 陽菜は頬を膨らまして、怒った仕草を見せる。 そう、爽太と陽菜は付き合っている。 陽菜は女子バスケ部の主将。 しかも、陽菜は学校でも美少女の部類に属された。 爽太も特別顔立ちが言い訳ではないが、それなりに整っていた。 だから、爽太と陽菜は学校公認のお似合いカップルで通っていた。
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