第一部 一章 白色の生活

3/6
前へ
/8ページ
次へ
「悪りぃ、悪りぃ、それよりいつものやろうぜ!」 爽太は足下に転がっているボールを拾い上げそう言う。 「なにそれー!本当に反省してるの?」 爽太が損ねてしまった陽菜の機嫌はさらに悪くなる。 「本当に反省してるって、だからやろ?」 爽太は屈託のない笑顔で言った。 その笑顔に陽菜は感化されたのかため息をつき、「もう……仕方ないなぁー」と言って軽く屈伸を始める。 爽太が陽菜を怒らせて爽太が謝り陽菜が折れる。 これが二人のスタイルだった。 陽菜が準備体操を終えると、爽太がゴールを背にしてフリースローラインに立ち、陽菜がボール持って向かい合うようにその正面に立つ。 一度ボールをついて爽太に向かってボールを投げる。 それをキャッチして、そのままバウンドさせて投げ返す。 そのボールが陽菜の手に触れると同時に、爽太は腰を深く落とす。 陽菜がドリブルを始めた瞬間、爽太と陽菜の1on1が始まりを告げる。 一時間のシュート練習、そして約30分のこの1on1。 これが爽太の毎朝の日課だった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加