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彼のことをちらちらと見ていた知らない女の方が、私よりずっと彼を理解していたのだ。
(あんな風に写真を撮って楽しめるタイプだというのを私は知らなかった‥)
彼は画像全てに保護マークをつけていた。
そんなことも知らずに、彼とこれからも交えるだろう未来を大切にしていた過去の私は、いったい何者でどんな生き物なのだろう。
こんなに惨めで情けなくても、私は被害者にすらなれない。
恋には所詮、自業自得がお似合いだ。
「私の過去にクーリングオフが効いたらいいのに」
かすみがかった空に真似てぼんやりとつぶやく。
返品した時間で新しいことをして、おそらくまた返品して‥
きっとそうやって不老不死になっていく。
ただ普通がいいだけなのに。
ああ、結局考えてしまう。
たぶんこれが失恋の落ち度なのだ。
変わらない過去を浮かばせて、無駄な悶着を繰り返しながら記憶の中を行ったり来たりのたうち回る。
それは日暮れみたいにいつの間にか訪れ、ぬくもりをシミに変え、シミを黒にして心を真っ黒くする。
私は怒ったり泣いたりしてその呪いのようなヘドロを吐き出したかったけれど、私の中に残っているのは衝撃の混じった官能で、それらは吐き出るどころか巨乳化したピンポンみたいにプニョンプニョンと私の体を跳ねるばかりだった。
消えてしまいたいなぁ‥
もしかしたら、もう半透明くらいにはなっているような気がする。
ただ、それでもやっぱりどうしても下腹部は痛くて、そんな痛みを夜用のナプキンだけがひたすらに受け止め続けているのだった。
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