707人が本棚に入れています
本棚に追加
「早瀬くーん! こっち、こっち向いてぇっ!!」
催促かよ。
「今、目が合った、目が合ったぁ!!」
そっか。
「近くで見るとより一層かっこいい! キャーッ、本物だぁぁあっ!」
偽物っているのかよ。
いちいち渾身のツッコミを入れながら、私は中々姿を見せない赤ぶよへの苛立ちを抑えていた。
と、その時。
突如教室の空気の流れが変わった気がした。
ゲーム音楽に集中している中、微かに、確かに聞こえる誰かの足音。徐々に大きくなってくる。
……近づいてきてる……?
少し興味を引かれたが、同じく突如流れが変わったゲーム画面を確認して私は一瞬にしてそれどころではなくなった。
対して菜々は熱っぽく、声がひっくり返らんばかりに私に叫んだ。
「や、ちょ、みこ、と! 早瀬くん、こっち来た! こっち来たよ!!!?」
「来たぁぁっ!! やっと赤ぶよ来たぁぁぁっ!! 連鎖再開、反撃開始じゃぁぁあっ!! 崩したるでぇぇぇぇっ!!!!」
「その前にお前の脳みそ崩すぞコルァァアッ!!」
菜々は私の後頭部をひっつかんだ状態でいきなり上に持ち上げた。
その拍子に肩まで伸ばされた私の癖毛がブチブチと生々しい音を立てる。
最初のコメントを投稿しよう!