一・豆、腐食開始

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持ち上げる際にスタートボタンを押してゲームをポーズ状態にしておいてくれたのは彼女のさりげない優しさだろう。 「うがぁぁっ、抜けるっハゲるっ! 毛根が怒涛の勢いで死滅していくのを感じるぅぅっ!!!」 助けてぇぇぇっ!!! と、叫んだところで。 私の目に、男子が映った。 着崩した制服に細身の体を包み、少し長めの黒い前髪の下から色素の薄い目で私を見下ろしていた。 その彼の顔を見た時、私は悟った。 この人が早瀬君だ、と。 (……かっこいい……な。確かに) 文句のつけどころすら全くない。アイドル並と聞いていたが、それどころじゃない。 まるで美形である事を神に義務付けられたような…漫画の主人公のような。そんな風貌。 大袈裟のように聞こえるが実際過言ではないのだ。かくいう私も、もしかしたら見惚れたかもしれない。 ……今、この状況…… ゲームに熱中しているというタイミングでさえなかったら、の話だが。 「ね? ね?! かっこいいでしょ!!」 「あー、うん。かっこいいね。初めてこんなかっこいい人見たよ、うん。ねぇ、ゲームに戻っていい?」
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