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持ち上げる際にスタートボタンを押してゲームをポーズ状態にしておいてくれたのは彼女のさりげない優しさだろう。
「うがぁぁっ、抜けるっハゲるっ! 毛根が怒涛の勢いで死滅していくのを感じるぅぅっ!!!」
助けてぇぇぇっ!!! と、叫んだところで。
私の目に、男子が映った。
着崩した制服に細身の体を包み、少し長めの黒い前髪の下から色素の薄い目で私を見下ろしていた。
その彼の顔を見た時、私は悟った。
この人が早瀬君だ、と。
(……かっこいい……な。確かに)
文句のつけどころすら全くない。アイドル並と聞いていたが、それどころじゃない。
まるで美形である事を神に義務付けられたような…漫画の主人公のような。そんな風貌。
大袈裟のように聞こえるが実際過言ではないのだ。かくいう私も、もしかしたら見惚れたかもしれない。
……今、この状況……
ゲームに熱中しているというタイミングでさえなかったら、の話だが。
「ね? ね?! かっこいいでしょ!!」
「あー、うん。かっこいいね。初めてこんなかっこいい人見たよ、うん。ねぇ、ゲームに戻っていい?」
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