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「はい!」
菜々の席までたどり着いた途端、渡されたのは鏡とコスメセットであった。なるほど、これらの道具を使って霊を体に入れていたというわけですな。
そこで、はたと気付く。
渡された道具、菜々の真剣な顔、この空気。全てを総合して考えると、そのうちすべき事がわれてくる。
つまり、私にもやれと言っているのだ。
降霊を。
私は瞬時にサァッと青ざめて、それらを菜々に押し返した。
「…………や。待って。私、降霊とかヤだよ。霊感ないから。確かに昔は幽霊っぽいもの見えた時もあったけど今は全然……。記憶に残ってるのはね、白い褌した髪の長いオジサンが井戸から顔出して軍手数えながら泣いてた事くらいで」
「だから何の話だよ聞きたかねーよお前の過ぎ去りし苦々しい記憶なんざ」
「その後警察っぽい人にどこかに連れてかれてたけど……とにかく幽霊見たのはそれ一回だけ……」
「幽霊じゃねーだろよく考えろよただの変態だろ」
ひとしきり私に突っ込んだ後、菜々はその可愛らしい顔を少し驚いたように引き攣らせて「まさかアンタ知らないの?」と私の肩を揺さぶった。
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