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私は鞄の中から納豆のパックを取り出してマイ箸で練り始めた。たちまち広がっていく異臭とその異様な光景に、しかし菜々は慣れたようにげんなりと私を見てきた。
「……また朝ごはんは納豆? よくご飯なしで食べれるよね。そしてよく学校に持ってこれるよね」
「仕方ないじゃん。今日も寝坊して食べる時間がなかったんだから。それに納豆は体にいいんだよ。美味いしさ」
ズルズルと口の中に吸い込まれていく納豆は私の大好物だ。命と家族の次に大切な物である。私の朝ごはんは80%が納豆であったりするほどだ。
納豆の味を味わいながら私は菜々の話を適当に流す事に決めた。
「へー、そっかすごいね早瀬君って。ちなみに選ぶって何を?」
それとなく、あまり興味の度合いを示さないように聞いた。
の、だが。
菜々から返ってきたのは私の想像を…否、常識を遥かに越えた答えだったのだ。
「そんなの、玩具に決まってんじゃん」
「オモチャ?」
「女子の事」
ブホッ、と音を立てて口の中の納豆が飛び出た。無惨に床に落ちた納豆に気を配る余裕すらなく、私は菜々の顔を大層な間抜け面で見返した。
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