居ても立っても/A/

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居ても立っても/A/

木々が葉を身に付けず見てくれからも寒さが辛かった季節が終わりを告げる。 あちらこちらで芽吹く若い青葉から春光が零れ朝露が眩しい。 小鳥の囀ずりを合図に人々も一日を開始する。 この世に何故争いがあるのか。 全てを消去し全てを快諾して見せるような太陽の暖かな眼差し。 人々は日が昇る間と沈む間だけ、胸に手を当て己に問い心あらわれる気持ちに浸るのだ。 その細やかな時間をどう過ごすか、それは人それぞれであるが。 少なくとも奥州の数人は気ままに過ごせまい。 小鳥の囀ずりは愚か、男のドスの効いた怒鳴り声が朝を告げる一声となる。 「っさ宗様!」 邪魔そうに主の腕を投げ飛ばし、寝癖だらけの髪を整える間もなく布団をむしりとる。 その髪の乱れようからは昨夜も激しい情事だったのだろうということを察せずにはいられない。 「何だよ小十郎……朝っぱらから」 こちらも随分髪は乱れているが、外に勢い良く跳ねる癖っ毛と丸で区別が付かない。 気だるそうに欠伸をしながら余韻から逃げられず枕を抱え込む。 「何度起こさせたら気が済むのですか! 今日こそはご自分のお力で起きる等ととうに達成していなければならないような目標を……」 「んなこといって、お前だって今起きた口だろ」 小姓の寝間着の裾を引いて起きるのかと前に屈んだ隙を見て、腕を引いて布団へ誘いキスをする。 「……お止め下さい。朝の清めもまだだというのに。 政宗様が起こして下さると思って寝た振りをして差し上げていたんですが、何か」 「別に振りしなくてもこっそり抜け出して先に清めてくりゃよかった話じゃん。何俺に責任転嫁しようとしてんの可愛いやつ」 「分かりましたからさっさと起きて下され!!」 = 居ても立っても = 続く 090316
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